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2023年8月★臨時号(高1~3)スマホによる眼への主な影響と予防策

※解説やもっと知ってほしいことなどは、ドラッグレターの下に書いてあります。

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解説やもっと知ってほしいことなど

<用語の説明>

網膜
眼球の内側にある半透明の神経の膜で、眼球に入った光を感じる働きがあります。角膜と水晶体を通った光はこの網膜上に焦点を結びます(ピントが合います)。
角膜
眼球の最も前にある血管のない透明な組織で、黒目の部分を被っています。光を屈折させて、水晶体とともに眼球に入った光のピントを合わせる働きがあります。
水晶体
透明で凸型の形をしており、厚みを変化させることで眼球に入った光のピントを合わせる働きがあります。
眼軸
角膜から網膜までの長さのこと。
脈絡膜
毛細血管が多く集まった膜で、主に網膜に栄養を送っています。

 

正視(正常な状態)

「物がきれいに見える」ためには、対象からの光が網膜上で焦点を結ぶ(網膜でピントが合っている)必要があります。
眼に入った光が網膜上で焦点を結んだ状態を正視(せいし)と言います。(正常な状態ということです)
光が網膜上で焦点を結ぶためには、角膜や水晶体を通過した光が適切に屈折していること、また眼球が変形していないことが重要になります。

 

近視とは

眼に入った光の焦点を結ぶ位置が網膜より前にある状態のことです。
近視の主なパターンは2つあり、1つは屈折が大きすぎること、もう1つは眼球が変形して眼軸が長くなる(前後方向に伸びる)ことです。
近視になると、近くの物ははっきりと見ることができますが、遠くの物はぼやけてしまい見えづらくなります。

近視になる原因は遺伝によるものと、環境による影響の2つがあるとされており、近年では環境による影響が大きいとされています。
環境による影響として考えられている主なものは、近くを見続ける作業(スマホやパソコン操作など)を休みなく長時間続けることです。

 

単純近視と病的近視

近視とは、近くの物にはピントが合ってはっきり見えるのに、遠くの物にはピントが合わずにぼやけて見えてしまう病気のことで、「単純近視」「病的近視」に分けられます。

<単純近視>
小学校高学年~中学校くらいに発生することが多く、一般的にみられる多くの近視は単純近視です。眼鏡やコンタクトレンズで矯正(きょうせい)できます。

眼に入った光の屈折に大きく関係しているのは水晶体です。
見たい物を近距離(30 cm以内)で見続けると水晶体が厚くなるだけでは屈折を調節できなくなり、その場合、人の体は眼球を変形させる(眼軸を長くする)ことで物を見えるようにしてしまうのです。
ドラッグレターの図で紹介した眼軸近視も単純近視です。
しかし、眼鏡などで矯正できるからと安心してはいけません。
眼軸が長くなるということは眼球の壁が伸びた状態になり、網膜や、網膜の下の脈絡膜という毛細血管が多く集まった膜が薄くなっているのです。
このような状態では、眼がちょっとした衝撃を受けただけで網膜が破れて網膜剥離(もうまくはくり)が引き起こされたり、血管が破れて出血したり萎縮(いしゅく;縮んで小さくなること)してしまうのです。
眼球内での出血量が多いと血で物が見えなくなって失明状態になり、出血した血を除去する手術が必要になります。

単純近視の程度が強くなることが病的近視の原因になるかどうかはまだ分かっていませんが、眼軸がどんどん長くなっていくと病的近視と同じ状態になります。

<病的近視>
小学校に入る前の幼児期に始まって進行する強い近視です。
眼軸が異常に長く、近視の程度が強いため、眼鏡をかけてもあまりよく見えるようにはなりません。
病的近視が起こる原因は不明ですが、環境による影響よりも遺伝が関与していると考えられています。
病的近視は失明原因の第4位になっています。失明する人のうち6.4%は病的近視によるものです。

 

斜視

斜視とは両眼の視線を目標に向かって合わせられない状態、つまり両眼で物を見るときに左右の眼の向きがずれている状態のことです。
斜視は多くの場合、小さなずれから進行していきます。
脳の病気やケガ、強いストレスなどのほか、スマホやパソコンなどを近距離で長時間使用すると片方の眼が内側に寄って急性の内斜視を突然発症し、物が二重に見える「複視(ふくし)」という症状が現れることがあります。
治療には手術が必要になることがあります。

 

近視、内斜視の予防策

スマホやパソコンなどを近距離で長時間使用しないようにすることが大切です。

<予防その1>
スマホやパソコンなどを使用する時間をあらかじめ決めておき、それ以外の時間は使用しない

<予防その2>
日中に十分な明るさのある屋外で過ごす時間が多い子どもは近視を発症しにくく、近視の進行も小さいことが分かっているため、1日2時間は屋外で過ごすとよいと言われています。
これは明るい中で遠くの物と近くの物への視線が短時間に何回も行き来し、一方で近距離の物を長時間見続けることが少ないため、水晶体が厚い状態のまま固まったり、眼軸が長くなってしまうことが起こりにくいためと考えられています。
ということは、屋外で過ごす時間をなかなか作れない人は、日常の中にこれに少しでも似た状態を取り入れればよいのです。
アメリカ検眼協会が提唱した「20-20-20ルール」は、屋外で過ごす状態に少しは似ている(?)ものとして、世界的に取り入れられているルールです。やり方は簡単です。

「連続して20分間デジタル端末の画面を見た後は、20フィート(6 m)離れたところを20秒間眺める。」です。

スマホやパソコン操作に夢中になっていると20分間はあっという間に過ぎてしまうので、タイマーをセットしてからスマホなどを操作することをお勧めします。

 

参考:
日本眼科医学会HP、日本弱視斜視学会HP、日本近視学会HP
病気が見える12 眼科(メディックメディア)、子どもの近視ハンドブック(2022年4月;参天製薬)

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