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2026年7月★臨時号(高1~3)やせ薬に手を出すことの危険性について

※解説やもっと知ってほしいことなどは、ドラッグレターの下に書いてあります。

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解説やもっと知ってほしいことなど

「やせ薬」のリスク

病気である「肥満症」の人に対する体重減少を目的とした医薬品は存在します。
その医薬品を使用する場合は、治療を目的に医師の厳格な管理のもとで行われます。
医師の厳格な管理が必要なのは、適切に体重を減らしていかないと健康被害が生じてしまうからです。

一方、病気ではない「肥満」の人や、ましてや健康な人(やせる必要のない人)をやせさせるための医薬品は存在しません。
「肥満」の人がやせたい場合は、運動と食事による正しいダイエット方法で行う必要があります。
健康な人はやせる必要はありませんが、体重を減らしたい場合は、「肥満」の人がやせたい場合と同じ方法で行う必要があります。
決して「肥満」の人も健康な人も、「やせ薬」を使ってはいけません

過去に日本で流行した「やせ薬」には、強制的に血糖値を下げる目的で糖尿病の人に用いる成分が含まれていて、低血糖という命にかかわる危険な状態になった人がいました。
また、甲状腺から分泌されるホルモンと同じ成分が含まれていて、バセドウ病(脈が速くなる、手が震える、眼球突出などの症状が現れる)と同じ状態になった人もいました。
それ以外にも、海外から個人輸入した成分不明の「やせ薬」によって、死亡したり、入院が必要になったなど、重篤な健康被害が生じています。

 

最近、日本で流行している「やせ薬」は、GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬といった主に糖尿病の治療に用いられる医薬品です。
それらに該当する「マンジャロ」「オゼンピック」「ウゴービ」「ゼップバウンド」「リベルサス」などを用いると、脳にある満腹中枢が刺激されるなどして食欲が抑えられ食べないダイエットと同じ状態になります。
食べないダイエットは、安全なダイエットだと思いますか? 

「フォシーガ」は糖尿病の人だけでなく慢性心不全や慢性腎臓病の人にも用いられる医薬品ですが、血液中の糖分を尿と一緒に体外に出すため脂肪がつきにくくなる一方、尿量が増えて体内の水分が失われ脱水状態になりやすく、また尿に糖分が混ざっているため尿路感染症にもかかりやすくなります。
どの医薬品も日本での使用が認められているものですが、あくまでも糖尿病の人などに使用する医薬品です。
ダイエット目的で使用すると、糖尿病の人などに医薬品が十分に行き渡らなくなり、迷惑をかけてしまうことがあります。
また、ダイエット目的での使用は「適応外使用」となるため、重篤な副作用により健康被害が生じて入院したり死亡しても医薬品副作用被害救済制度が利用できず、給付金は受けられません

今後も新たな「やせ薬」が登場してくる可能性はありますが、運動と食事による正しいダイエット方法ではないため、「楽にやせられる」「スマートダイエット」などのように宣伝されても必ず危険が伴います
絶対に手を出してはいけません!!

※ 医薬品副作用被害救済制度:医薬品を国が決めた通りに正しく使用したが、重篤な副作用により健康被害が生じて入院したり死亡した場合、給付金が支給される制度。

 

正しいダイエット方法とは

「適度な運動を継続し、その運動量(消費カロリー)を踏まえて、適量でバランスの良い食事を摂る」のが正しいダイエット方法です。

運動は、運動中に脂肪を燃やす「有酸素運動」(ウォーキングやゆっくり泳ぐなど、激しくない運動)と、運動後に脂肪が燃えやすい状態をつくる「筋肉トレーニング」(筋トレなど、やや激しい運動)をバランスよく行うのが理想です。
毎日でなくても構いませんが、1週間に数日以上の運動を継続していくことが大切です。

食事では「摂取カロリーが消費カロリーを少しだけ下回る」ことが必要ですが、大幅にカロリーが不足したり、また栄養バランスが悪いと、筋肉まで落ちて基礎代謝量(体を動かさなくても消費される、生命維持に必要な最低限のエネルギー消費量のこと)が低下し、リバウンドしやすい体になってしまいます。
18~49歳の男女が摂取すべき栄養素のバランスは、タンパク質13~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%と言われています。
そのため「タンパク質:脂質:炭水化物 = 2:3:5」の割合を意識してみましょう。

正しいダイエット方法については、ドラッグレター「正しいダイエットの考え方を知ろう (2018年2月号)」もご覧ください。

 

日本人は「やせすぎ」?

世界的に見ても、日本は「やせすぎ」の人が多い国です。特に、若い女性では健康を損なうレベルの「やせ:BMI<18.5 kg/m2が目立っています。

〔平成22年~令和元年、令和4年〕やせの者(BMI<18.5 kg/m2)の割合の年次推移(20歳以上)
「令和4(2022)年国民健康・栄養調査」の結果;厚生労働省より

ちなみに、平成29(2017)年度におけるBMI 30.0(肥満(2度))以上の割合は、日本は3.7%、米国は38.2%、経済協力開発機構(OECD)加盟国(日本のほか、米国、イギリス、イタリア、メキシコ、トルコ、ハンガリー、コスタリカなど)の平均は19.4%であり、日本は世界的にも極度の肥満の割合が低い国なのです。

 

世界的なファッションの中心地であり、パリ・コレクション(パリコレ)も開催されるフランスでは、現在、やせ(BMI 18.5未満)のモデルを起用しないルールが運用されています。

かつてファッション業界では「細いほど美しい」とされてきた時代がありましたが、実はその裏で、極端な食事制限で健康を損なうモデルが多くいたのです。
「細いほど美しい」とされてきた時代では、細いモデルを見た若い世代が過度なダイエットを行い、拒食症など摂食障害が急増し、社会問題となりました。
こうした背景からフランスでは法整備が進み、現在モデルには「健康であることを証明する医師の診断書」の提出が義務付けられています。

理想の体型を追求したくなってしまうのは仕方ありませんが、自身の健康(体と心の両方)を損なうことがないようにしてください。

 

女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome, FUS)

若い女性のやせが深刻化するなか、日本肥満学会は2025年4月、18歳~閉経前女性を対象に、やせすぎが招く健康障害について新たな病気の概念を「女性の低体重/低栄養症候群(FUS;ファス)」として提案することを発表しました。

FUSでは、低体重や栄養不足が引き起こす具体的な健康障害として、貧血、低血圧、骨密度低下・骨粗しょう症、糖尿病のリスク、脂質異常症、月経周期異常、筋力低下、髪質・肌質の低下、冷え性、頭痛、全身倦怠感、抑うつ・不安感が挙げられています。

またFUSでは、やせの要因を①「体質的」、②「社会経済的」、③「心理的・社会的」の3つに分けています。
①は体質的なものであり、これに該当する人は、体重は増えにくいが体の機能は正常に保たれているため、骨密度低下のリスクがある一方、②や③ほどは問題視されません。
②に該当する人は貧困を背景として十分な食事が得られないため、低栄養状態に陥る危険性があります。
個人の努力だけでは解決が困難であるため、社会構造的な支援や政治的施策が必要となります。
③に該当する人は、周囲の人やメディア、SNSなどにより「やせ=美」という価値観を有することにより、身体への不満過度な痩身願望(そうしんがんぼう:スリムな体型を望むこと)が形成されやすくなります。
これが過度な食事制限や偏った食生活につながり、それが長期化するとFUSにつながっていくと考えられています。

日頃から健康に関して正しく理解してもらうための教育を施す、健康診断などでFUSの早期発見に努める、FUSに該当する場合はバランスの良い食事摂取のほか必要に応じて医療機関を受診してもらう、FUSに該当する人を周囲の人がサポートする体制を確保することなどが対策として考えられます。

 

医薬品を勝手に販売・授与してはいけません

2026年6月2日、SNSを通じマンジャロが個人間で売買されたことに関して、大阪府や奈良県に住む20~30代の男女3人が大阪府警より書類送検されたという事件がありました。
これを受けて3日後の6月5日、厚生労働大臣が記者会見で「マンジャロ等の糖尿病薬の個人間売買については、現在、SNS等で広がりつつある状況と認識しています。一般に、マンジャロを個人間で売買することは違法です。厚生労働省としては、都道府県と連携し、SNSを含めたネットパトロールを強化して監視していきます。薬機法違反が確認される場合には必要な取締りを行ってまいります。(以下、省略)」と発言されました。

 

医薬品は人または動物の健康・生命に関わるものであるため、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)により、販売や授与(無料を含む)は「できる場所」「できる人」が決められています。
身近な「できる場所」は病院や診療所(医院・クリニック)、薬局、ドラッグストアです。
「できる人」は医師、薬剤師、登録販売者です。
インターネット経由で医薬品を購入する場合も、実在する「できる場所」「できる人」からとなります。(例えば、実在する薬局の薬剤師から)

もし、治療のために処方されていた医薬品が結果的に余ってしまった場合や、自由診療(自費)で入手した医薬品を使用しなかったため残った場合、またドラッグストアなどから予備として購入した医薬品が残ってしまった場合など、医療用や一般用を問わず合法的に入手した医薬品であっても、それを他人に販売・授与したら薬機法違反で検挙されます。
絶対にしてはいけません!! 

では、購入は大丈夫なのでしょうか? 「できる場所」「できる人」以外の場所・人から医薬品を購入することは犯罪を助長する行為です。
さらに、法律に関する問題以外に品質や衛生的な問題もあります。
購入しようとしている医薬品が高温多湿の場所に放置され変質していたり、特に注射薬では他人が使用したものだった場合、他人の体液(血液など)が微量に混入したことにより感染症にかかる可能性があるためです。
購入も絶対にしてはいけません!!

 

参考
・マンジャロ皮下注アテオス、オゼンピック皮下注、ウゴービ皮下注ペン、ゼップバウンド皮下注アテオス、リベルサス錠、フォシーガ錠 各添付文書・インタビューフォーム
・厚生労働省HP(令和4(2022)年国民健康・栄養調査、日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書、健康日本21アクション支援システム、個人輸入した未承認医薬品等の服用後に発生した健康被害事例について)
・日本肥満学会 女性の低体重/低栄養症候群FUSステートメント
・フランス公衆衛生法典 第L7123-2-1条
・経済産業省HP(OECD(経済協力開発機構))
・公益財団法人長寿科学振興団体HP
・横浜市スポーツ医科学センター 脂肪燃焼の理論
・大正製薬HP
・読売新聞 online(2026年6月2日、「マンジャロ」を無許可で販売・保管か、大学生ら男女3人を異例の書類送検・・・「やせ薬」として広まる)
・厚生労働省HP(2026年6月5日、上野大臣会見概要)

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