2026年3月号(高3)妊娠と医薬品 ~将来のために~
※解説やもっと知ってほしいことなどは、ドラッグレターの下に書いてあります。
解説やもっと知ってほしいことなど
妊娠中は、お腹の赤ちゃん(胎児)のために、いつもより注意しないといけないことが多くあります。
その一つが医薬品の使用です。
医薬品の種類や使用する時期によっては胎児の体に奇形が生じるなど、重大な影響を与えてしまう可能性もあるので、男女問わず、将来のために正しく理解することが大切です。
妊娠週数の数え方
妊娠の週数は、最終月経の始まった日を起算日として0週0日とし、次の日は0週1日、さらに次の日は0週2日、のように数え、最初の週の最終日は0週6日となります。
次の週の初日は1週0日、次の日は1週1日、さらに次の日は1週2日、最終日は1週6日、次の週の初日は2週0日となり、以降このように数えていき、40週0日が出産予定日となります。
胎児への医薬品の影響
無影響期に医薬品を服用して受精卵に医薬品の影響が現れた場合、その影響は修復されるため、胎児に奇形は生じません。あるいは受精卵への医薬品の影響が修復されない場合、受精卵は着床しません。(つまり奇形児は産まれてきません)
絶対過敏期は器官形成の時期であり、中枢神経や心臓、顔面、四肢などがつくられるため、医薬品の影響を受けると心臓や手足などに奇形を持った赤ちゃんが産まれてきてしまいます。
この時期に医薬品を使用してはいけません。(この時期に使用しても大丈夫な医薬品もありますが、その場合でも産婦人科医の指示のもとで使用します)
相対過敏期間は、顔面や四肢などがまだつくられ続けているため、医薬品の影響により胎児に奇形が生じることがあります。
比較過敏期~潜在過敏期は、受精卵から人型となった胎児が成長していく時期になるため、医薬品の影響を受けると胎児の成長に影響が出ることがあります。
胎児に奇形を生じさせる可能性が高い、あるいは証明された医薬品など
胎児に奇形を生じさせることを催奇形性(さいきけいせい)と言います。
催奇形性を有する医薬品の中には、絶対過敏期や相対過敏期に服用すると高い確率で胎児に奇形を生じさせる、あるいはそれが証明されたものがあります。(※は医薬品ではありません)
メトトレキサート(リウマチや白血病の治療薬)、男性ホルモン製剤、エナラプリルなど(ACE阻害薬という高血圧治療薬)、多くの抗がん剤、チアマゾール(バセドウ病の治療薬)、ワルファリン(血液を固まりにくくする医薬品)、多量のビタミンA、エトレチナート(ビタミンAの一種。角化症、乾癬、魚鱗癬、掌蹠膿疱症などの難治性皮ふ疾患の治療薬)、イソトレチノイン(ビタミンAの一種。日本では承認されていないが、米国等では難治性のニキビ治療薬として用いられている)、炭酸リチウム(躁病、双極性障害における躁状態の治療薬)、トリメタジオン(てんかん治療薬)、フェニトイン(てんかん治療薬)、カルバマゼピン(てんかん、顔面神経痛の治療薬)、バルプロ酸(てんかん、片頭痛の治療薬)、テトラサイクリン(抗生物質)、サリドマイド(1950年代末から1960年代初めにかけて多くの奇形児が産まれた薬害の原因成分。現在は多発性骨髄腫という血液がんなどの治療薬として用いられている)、放射性ヨード(バセドウ病、甲状腺がんの治療薬)、多量のエタノール※、コカイン※、メチル水銀※(水俣病の原因物質)、ポリ塩化ビフェニル※(カネミ油症事件の原因物質)
ミソプロストール(痛み止めの長期服用による胃・十二指腸潰瘍の治療薬)も催奇形性を有しますが、その確率は上記の医薬品ほど高くありません。
しかし、子宮を収縮させたり、胎盤や臍帯(へその緒)の血管を収縮させる作用がありますので、妊娠中に服用すると流産や早産につながったり、血管収縮による影響(母体と胎児との間で、酸素や二酸化炭素、栄養や老廃物のやり取りに影響)が生じる可能性があります。
奇形が生じる確率
妊娠中に医薬品を使用していなくても、胎児に奇形が生じる確率は2~3%存在すると言われています。
また危険な時期に医薬品を使用したからといって、胎児に必ず奇形が生じるわけでもありません。
使用する医薬品の種類や量にもよりますが、多くの医薬品は比較的安全と考えられているため、万一危険な時期に医薬品を使用してしまったら、直ぐに産婦人科医や薬剤師に相談しましょう。
参考
治療薬マニュアル2025(医学書院)