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2021年6月号(高2)中高生に見られる“貧血”は主に2つ

※解説やもっと知ってほしいことなどは、ドラッグレターの下に書いてあります。

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解説やもっと知ってほしいことなど

中高生に見られる“貧血”は「鉄欠乏性貧血」または「起立性調節障害」のいずれかが多い。

鉄欠乏性貧血

“貧血”は血液中の赤血球総量が少なくなるために起こり、体は酸欠状態になります。
赤血球総量が少なくなるのは、正常な赤血球が十分に作られない、あるいは作られた赤血球が出血したり壊れたりするためです。(壊れることを溶血と言います)

鉄欠乏性貧血鉄分不足によって引き起こされる貧血で、赤血球の数自体も少なくなりますが、ヘモグロビン(※1)が十分に作られなくなることで全身へ酸素が供給されにくくなり、体が酸欠状態になります。

(※1)ヘモグロビン:ヘムという鉄を含んだ色素とグロビンというタンパク質からできています。ヘモグロビンは赤血球に含まれていて、酸素運搬を担っています。

若年~中年の女性に多い

わが国で鉄欠乏性貧血になる割合は、女性:約10%、男性:2%以下と言われています。
様々な理由で、鉄欠乏性貧血になります。

(例)
・若年~中年女性に多いのは、月経により赤血球が体外に出ていくためです。[体内から鉄分が失われる
・鉄分は、尿、便にも混ざって体外へ出ていきます。そのため男女問わず激しい運動をする人(※2)は、汗をたくさんかくので鉄分不足になりやすいのです。[体内から鉄分が失われる]
・男女問わず成長に伴って血液量や筋肉量が増えることで、鉄分が必要になります。妊娠、授乳でも鉄分が必要になります。[体外からの鉄分が必要になる]
偏食、食事制限(ダイエットなど)で鉄分が足らなくなります。[体内に鉄分が入ってこない]
・男性や閉経後の女性では、消化管出血(消化性潰瘍、大腸がんなど)や痔(じ)による出血で鉄分不足になることがあります。[体内から鉄分が失われる]

(※2)激しい運動をする人のうち、長距離走、剣道など、足底に強い衝撃を長時間受け続ける人は、衝撃により足底で赤血球が壊れて「溶血性貧血」が起こることもあり、「鉄欠乏性貧血 + 溶血性貧血」の可能性があるので注意が必要です。

鉄分の多い食品

鉄分には ヘム鉄 と 非ヘム鉄 があり、長所と短所があります。
どちらかに偏ることのないよう、またグロビンの元となるタンパク質、造血や鉄の吸収に不可欠なビタミンC、葉酸などをバランスよく摂ることが大切です。

【ヘム鉄】
動物性食品由来。腸からの吸収率は約25%と非ヘム鉄に比べて高い。しかしコレステロールも多いため、過剰摂取に注意。(レバー、赤身魚(カツオ、イワシ、マグロ、ブリ)など)

【非ヘム鉄】
植物性食品由来。腸からの吸収率は約5%で、ヘム鉄に比べ低い。
(あさり、ほうれんそう、卵、大豆、ひじき(※3) など)

(※3)2010年以降、製造に使う釜の多くが鉄製からステンレス製に代わり、ヒジキに含まれる鉄分は約1/9に減りました。

治療

・体内の鉄分が “減る” 順番: (1)肝臓に貯蔵されている鉄 → (2)血液中の鉄 → (3)赤血球に含まれる鉄 → (4)体の組織中の鉄
・体内の鉄分が “増える” 順番: (4) → (1)

病院で検査(採血)しながら「(1)肝臓に貯蔵されている鉄」が十分量になるまで鉄剤(錠剤)を服用します。(鉄分は吸収されにくいので時間がかかり、服用は約6ヶ月間になります)

鉄剤はお茶で服用しても大丈夫です。服用期間中は便が黒色になります(吸収されなかった鉄が便と混ざるため)。また腹部不快感を訴える人が比較的多いですが、服用の仕方を工夫することで軽減できます。

鉄剤は一部の医薬品と相互作用(※4)があるので、鉄剤を服用中に他の病院にかかるときは、お薬手帳を医師に見せ鉄剤を服用していることを伝えてください。

(※4)鉄剤と一部の医薬品を同時に服用すると、相手の医薬品や鉄剤の吸収率が低下してしまいます。

起立性調節障害

 起立に伴って血圧や心拍に異常を生じる自律神経の病気で、貧血と同じ症状が見られますが、医学的には貧血ではありません
また朝起きるのが困難で、午前中は調子が悪いのに、午後~夜にはスマホやテレビを楽しむなど元気になることが多いので「怠け病」と言われることがありますが、自律神経がきちんと機能しなくなることが原因の身体疾患であり「怠け病」ではありません
(調子の悪さ: 1日の中では午前中、季節では5月~秋、天候では不順時に強くなる傾向があります)

前思春期~思春期に多い

わが国で起立性調節障害を持っている割合は、小学生: 5%以下、中学生: 15~25%、高校生: 15~30%と言われています。男女比は「 男性:女性=1:1.5~2 」です。

自律神経の異常は、
・水分の摂取不足
・学校や家庭のストレス(身体が辛いのに登校しなければならないという圧迫感が、さらに症状悪化につながる)
・日常の活動量低下 → 筋力低下と自律神経機能低下 → 下半身への過剰な血液移動 → 脳血流低下 → さらなる活動量低下
どによると考えられています。

診断

(1)立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
(2)立っていると気持ちが悪くなる、ひどくなると倒れる
(3)入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
(4)少し動くと動悸あるいは息切れがする
(5)朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
(6)顔色が青白い
(7)食欲不振
(8)時々、へその周囲が痛くなる
(9)だるい、あるいは疲れやすい
(10)頭痛
(11)乗物に酔いやすい

の中から、3つ以上当てはまれば起立性調節障害を強く疑います。
そして起立性調節障害と似た症状が見られる病気(鉄欠乏性貧血や甲状腺の病気など)ではないことを検査などで確認し、起立に関する試験を行って起立性調節障害のタイプを判定します(タイプは4つあり、最近ではさらに2つのタイプが示されています)。さらに重症度判定などを行います。

治療

・本人に加え保護者にも「起立性調節障害は身体疾患であり、根性や気の持ちようだけでは治らない」ことを理解してもらいます。
・学校とも連携を図って治療にあたります。
辛くても、日中は横にならないようにします。
毎日、水分を1.5-2 L、塩分を10-12 g摂取します。
毎日30分程度の歩行を行い、筋力低下を防ぎます。
眠くなくても就床が遅くならないようにします。規則正しい生活リズムを心がけます。
・症状に合わせた治療薬を服用します。
・心理療法を受けます。

経過

・日常生活に支障のない軽症例:適切な治療によって2~3ヶ月で改善することが多いです
・学校を長期欠席する重症例:社会復帰に2~3年以上を要します

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